A short story of mari belle

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某国のアリス

わたしが

潮の音を 子守唄に 心地よく眠っている 月の宵


あのこは こっそり門番に 

薔薇と蛙の油で造った 眠り薬を 上手に かがせて 


 高い塔の小窓から

ひらり ひらりと 脱け出した 



あのこの 衣には 左と右に 手の平くらいの ポッケがあって

左のポッケに白い笛 右のポッケに黄色いヒヨコ


月の宵を くるくると 

歩きながら風の中


あのこが奏でる 笛の音と 寝入るヒヨコの柔らかな

寝息が 潮の音に乗って 私の耳に 届くから


どうしようもなく かなしくて 

わたしは 貝殻 抱きしめ眠る


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忘国のアリス



雨の音 雨の音 ねこの 髭




雨の音 雨の音 ねこの 爪




顔を 洗うと 雨が降る




わたしは じぶんが 魚だか 




ひとだか 猫だか 蛙だか




思いだせずに  夜になる




そうよ わたしは 忘国のアリス








風の音 風の音 月の宵




風の音 風の音 月の問い




午睡の後は 背が伸びる




あなたは じぶんが ピアノだか




セロだか 弓だか 砂丘だか




思い出せずに 途方に暮れる




そうよ あなたは 忘国のアリス



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